デリーからバラナシへ、900kmを横断しながら次世代を担う日印の若者同士の相互理解や交流のきっかけをつくることを目的とした、体験型のアイデアソンを開催しました。道中では様々なアクティビティを通し、日印の歴史や文化等の相違点・類似性に気づきを得ながら両国の課題や強みにも触れ、更なる関係構築に向けたアイディア創出に取り組みました。最終地点のヴァラナシコンベンションセンターでは、アイデアソン開始から約8日間を経て、各チームがそれぞれ設定した課題に対し、解決する商品やサービス案のプレゼンテーションを実施。全10チームのアイデアが最終発表に臨みました。
■プログラム名:900km横断・課題体験型アイデイアソン Hack The Innovative Future
■期間:2022年9月16日~24日
■応募人数:日本 628名、インド 4,270名
■参加人数(選考者):日本 20名、インド 20名
■参加チーム数:10チーム(日本2名、インド2名の1チーム合計4名からなる全10チーム)
DAY 0
DELHI
オープニングセレモニー
グルガオンにあるダイアパークホテルでオープニングセレモニーを実施しました。オーガナイザーからの挨拶やワークショップを通して、本企画の目的の再認識とアイスブレイクを行い、旅の準備を整えます。
DAY 1
DELHI
世界GDPランキング第5位の経済大国インドの首都で世界の最先端を体感
日本から進出している企業の取り組みや、勢いのあるインドの企業を知るため、4つの企業を訪問、見学。各社によるレクチャーや質疑応答を行いました。ホンダ・モーターサイクル・アンド・スクーター・インディアの二輪工場では日本の強みであるモノづくりを学び、日米にも進出しているインド発のスタートアップ、Grey Orangeにてロボティクスによる物流の自動化を見学。また、インド、欧米諸国を支える世界的IT企業、タタ・コンサルタンシー・サービシズでは5Gラボを訪問し、最後はインドのグルグラム都市圏開発公社(Gurugram Metropolitan Development Authority : GMDA)では、NEC Technologies Indiaの技術を使ったスマートシティ実現に向けた交通監視システムや市中監視システムなどの構築を手掛けるセンターを視察しました。企業訪問のあとは振り返りのワークショップを実施。参加者からは様々なアウトプットが出るほど、多くのことを吸収した様でした。また、銀行口座間取引をデジタル上で即時完結可能にするUPIの体験も実施しました。
DAY 2
AGRA
セッションや世界遺産訪問を通し、歴史や文化的側面から日印の理解を深める
歴史セッションは、メンターによるセミナーと、参加者全10チームによるプレゼン発表の2部構成。各チームはそれぞれに割り当てられた歴史の範囲を調査し、プレゼンを実施。全チームの発表により、両国の系統立った歴史を学習出来ました。
また、世界遺産であるアグラフォートとタージマハルへ訪問し、栄枯盛衰の政治史や現代史につながる背景を、体験を通して学ぶことでより深い理解に繋がりました。
DAY 3
LUCKNOW
新旧の街並みを比較体感し、インド地方都市の開発規模・スピードを実感
不動産会社のColdwell Banker Richard Ellis(CBRE)より、インド最大の人口を抱えるウッタル・プラデーシュ州の、州都ラクナウの特徴・モール展開についてのレクチャーを受講しました。英領インド帝国時代の庭園と遺跡があるブリティッシュレジデンシー訪問では戦争の爪痕に触れ、都市発展までの歴史を体感。さらにハイクラス層向けのショッピングモールも視察し、現代におけるラクナウの高い生活水準を目の当たりにしました。
DAY 4
PRAYAGRAJ
日本の有機農業の普及に取組むマキノスクールを訪問
1974年からアラハバード農業大学で日本の有機農業や日本食品の加工技術普及に努める、マキノスクールを訪問しました。インドの農業事情や、インドの地方農村で日本の技術を使った有機農業を導入する意義と課題、小規模農家の女性の自立などを多角的に学習。作業風景の見学や農家とのコミュニケーションを通して、農業・農村の発展とは何かを学びました。
DAY 5
varanasi
日印両国の文化や事業を通して二国間のつながりの深さを体感
約3000年の歴史をもつ世界最古の都市ヴァラナシで、仏教四大聖地のひとつであるサルナートを訪問。その後、独立行政法人国際協力機構(JICA)のヴァラナシ浄水事業についてレクチャーを受けました。
その後は、いよいよ発表に向けたアイデア出しです。今までのツアーでの体験や感じた課題をアウトプットするワークショップを実施し、各チームは最終発表に向けて準備を行いました。
DAY 6-8
ideathon & presentation
日印交流の新たなシンボルの場で、若者が2040年の未来を創造
アイデアソンの最終発表会は、日本政府が「日印友好の証」として、建設を支援してきた『ヴァラナシ国際協力・コンベンションセンター』で開催されました。日印の想いがつまった会場で、各チームはテーマ選定から事業化アイデアに至るまで様々な切り口から取組み、両国に存在する課題を、両国が持つ強みを活かして解決を図るプレゼンテーションを作り上げました。
どのプレゼンテーションも日印若者の友情・信頼関係に溢れ、両国の抱える課題に対する思い遣りが深いものに仕上がっていたと、審査員・スポンサー企業皆様から称賛の声が上がりました。
MIRAI
IT人材不足の日系企業と、インドの高度IT人材をつなぐデジタルマッチング事業
私たちのビジネスモデルは、 日系企業がIT人材の深刻な不足に直面している中、インド人メンバーからインドの優秀なIT人材が就職困難であることを聞き、日印間での需要と供給がマッチするのではないか?という仮説から着想を得ています。インドでは、失業中のIT人材と希望する企業を結びつける適切なルートがありませんでした。また、日本におけるIT人材の労働力不足という問題もあります。このギャップを埋めるために、人材交流による解決策を提案しました。
IT人材とそれを欲する日系企業との間で、パーソナリティテストを活用したマッチングシステムとともに、文化などを教えるスクーリングシステムも導入することで、2国間でのより継続可能な事業を提案しました。日系企業が日本人IT従業員に払う給料は、インド人IT従業員にとって、かなりの好条件であるため、日印間でのマーケットポテンシャルには十分な期待ができます。そして、最終フェーズとしては、このシステムを有料化し、BtoBへと移行するものとなっています。
本プログラムは、単純にビジネスアイデアを出すプログラムではありません。インドという国は、特に現地に行かなくては理解することのできない文化・社会問題・歴史が存在します。それをアイデアソンを通し、自分達の目で観察する機会を設けていただいたことで、実現可能性や必要性にまで視野を広げながらビジネスを考えることができました。各個人で問題提起が明確にできたからこそ、全メンバーが情熱を持ち、時には衝突しながらも取り組んだことで、全てのアイデアが必要性高く、そしてユニークなものとなりました。Hack the Innovative Futureが実現されたことで出会った日印40人のメンバーは、一人ひとりが今後それぞれの分野で活躍し、そして未来の日印関係の更なる発展に貢献することになると思います。この機会を下さった皆様に、再度御礼申し上げます。
東京都
京都府
Haryana
Madhya Pradesh
JIJIVISHA
医療機関の指揮命令系統の確立と所得階層ごとの嗜好反映を通じて最適な医療選択を可能にするアプリ
私達は2つの医療制度に関する問題を取り上げました。1つは、一元化された医療の指揮命令系統がなく救急医療が最適な形で提供されていない事です。救急車の稼働状況や病室の空き状況、医師数等の情報が一元管理されておらず、救急医療の質を下げています。また、交通渋滞が起きやすいインドでは、医療機関までの距離だけでなく渋滞情報を考慮した上で医療機関が選択される必要があります。2つ目は、医療保険制度が整備されておらず貧困層の医療アクセスが担保されていない事です。個人の医療費負担額が高くなっているため、低所得層が医療にアクセスしづらい環境が生まれています。
1つ目の解決策は、救急車の稼働状況や病室の空き状況、救急医療に対応できる医師数等の情報の一元管理です。そのために、各医療機関をつなぐ指揮命令系統アプリをつくります。救急車の配車は集中管理システムが行い、実際の患者の運搬は第3者機関が行います。第3者機関が配車とマネタイズを担当することで、経済的な持続可能性を担保します。運営に係るコストは、患者が有料の救急車を選択した際の使用費や企業広告費、個人の保険プランのオプションで賄います。また、農村などの僻地では救急車を簡易的な健診のためのモバイルクリニックとして利用し、医療格差の是正及び医療機関の収入向上を目指します。2つ目の解決策は、所得に合わせた医療の選択をできるようにすることです。有料サービス利用者の支払い額で貧困層の利用料を工面します。上記は、『富むものが貧しいものを助ける』というインドで浸透している考えをビジネスに反映したものです。
初めに、このような機会を下さった関係者の皆様に深く感謝を申し上げます。このプログラムを通じて、いかなるバックグラウンドを持つ人とも心を通わせ協業できる事を学ぶ事ができました。帰国後も学生間では頻繁に情報共有が続いており、このプログラムは出発点であったと確信しています。自分の目でインドの急成長とその影の貧困を目の当たりにした事や、一日中日印の将来について話し合い、夜は疲れを忘れて参加者達と踊った事は、何にも代えられない貴重な経験でした。今後はこの心強く頼もしい仲間達と一緒に各々の分野で日印の未来をつくっていきたいと思います。
東京都
福岡県
Uttar Pradesh
Delhi
Sakura Sahay
Farm-In -土地の細分化問題解決と農家の収入向上のための掲示板サービス-
2つの農業に関する問題を取り上げました。1つ目は、土地細分化問題です。インドの農家数は1970-71年から2015-16年にかけて7100万戸から1億4500万戸にまで増加しましたが、平均農地面積は2.28ヘクタール(ha)から1.08ヘクタールに半減しました。この問題の背景は、インドの相続法によって親が所有していた農地が複数の相続人によって分割されることで起きています。土地の細分化は農業生産効率を低下させています。2つ目は、農業従事者の低収入問題です。NSSOの消費支出調査のデータによると、農業に従事している個人事業主の20%以上の収入は貧困ライン以下にあります。この問題は、季節によって農家収入が変動することや農機具購入の際の借金によるものです。このような農業従事者の貧困サイクル問題と、上述の土地の細分化によって農業生産効率が悪いことが相まって、農家の収入が少なく、ローンを返済できずに負の連鎖が起きているのです。
2つの問題を解決するために、農業起業家と、土地や労働力を一時的に提供したい農家を直接つなぐ掲示板サービス「Farm−In」を構想しました。例えば、農業起業家は集めたい土地と求人情報を載せ、農家はそのために近隣の農家と協働し、土地を集約することでマッチングが成立します。その逆も可能です。このサービスを利用することで、農業起業家は農地集積コストを大幅に削減できます。一方で労働者は、中間業者を介さない契約に基づき収益を得ることができます。この掲示板サービスでは、農業起業家からの利用料と仲介手数料で事業を継続します。
Hack the Innovative Futureは私たちの人生を変えるような体験でした。互いの文化や国を知るだけでなく、一緒にアイデア創出にも取り組めました。1週間の旅で、私たちは有益な洞察を得て、そうした情報をもとに最終日に発表するためのアイデアを生み出すことができましたました。個人的には、アイデアソンは自分の新たな側面を発見する充実したやりがいのある機会でもありました。こうした経験ができたのも、ひとえにHack the Innovative Futureの組織委員会、スポンサー企業やスタッフの方々のご尽力とご支援のおかげです。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
Gujarat
愛知県
三重県
Bihar
Motto Chalo
Doraemon
Direction
SATORI
Metro
Masala &Sushi
ViNgae
Saurabh Joshi
小川 諄
青年交流事業実行委員長
田口洋二
インド三菱商事 取締役社長
31 OCT 2022
アイデアソンの特集がNHKワールドの英語リポート、NHKワールドYOUTUBEチャンネルで放送されました。